#16は2008年冬の最後の一枚から始まった。今年は2月も末の頃からにわかに暖かく、例年にないスピードで雪解けが進んだように思う。春の仕事っぷりは4月半ばまではパーフェクトに近く、去年よりも10日ほど早い桜の便りを耳にしても、さすがに今年の春はひと味違うね─ぐらいにしか思っていなかったのだが、甘かった。メチャメチャに甘かった。アンコにハチミツ、練乳にグラニュー糖以上の甘さだ。パワフルな春エンジンのターボモードのような促成栽培的開花は、不揃いな満開と、てんでバラバラな散り際の原因にしかならなかったし、ゴールデンウィーク前には散り始めていたし、あれだけ爽やかだった空は重苦しくどよよんとしてくるし、結局のところ、前半の暖かさを後半で盛り下げて痛み分け、良くてもせいぜい平年並みと言ったところではなかったろうか。
そんな春のエポックとして語らずにはいられないものが二つある。ひとつは新しいカメラ─ニコンD300の導入であり、ひとつは、画像処理の比較的ドラスティックな変化である。この二つ、実はとても密接に関連している。どういう事かというと、ニコンD300の異様なほど階調を持った「浮き出るシャドー」と、RAWだろうとJPGだろうと、常に微妙な高さの色温度いうか色合いの対応策を暗中模索しているうちに、フォトショやRAW現像ソフトのキラープロセスというか解脱的テクにいたってしまい、結果、新型ウェポンのD300より古参のD70の方がはるかに「いい味」を出せるようになってしまったのだ。ノイズは減ったし解像感も階調性も格段に向上した。工程数は増えたものの精度が上がったので、結果的に作業性も良くなった。なにより「絵づくり」が一層楽しくなったのが一番の収穫だろう。対してD300はというと、振り回されているというか、ありていに言って持て余し気味である。どうやってもイメージどおりに仕上がらないのだ。大きな声で言えないが、こいつはもしかして・・・いや、やっぱり言わないでおこう。いずれにしても、#319あたりからD70sの出番が増え、D300の出番がめっきりと減ってきたのは紛うことのない事実である。2008年の、春の最後と夏の最初の一枚も、それぞれD70sだ。残念なことだが、夏が来るまでにD300を飼い慣らすことは出来なかった。しかし、私には勝算がある。少なくとも、まったくないわけでもない。まあ、今はそういうことにしておこうと思った春であった。
NIKON D70 NIKON D70s NIKON D300 CANON IXY-DIGITAL70
タムロン18-50mm ニッコール70-300mmVR シグマ10-20mm シグマ18-70mm スピードライトSB-800