3月末、突然のように春が訪れた。街のいたるところに惜しみなく陽光が降り注ぎ始めるや、あれほどあった雪もあれよあれよという間に消え、行く人の衣も足取りも明らかに軽くなってゆく。まあそれが春というやつなのだが、野暮ったい厚手の軍用コートを脱いだら、レモン色も鮮やかなワンピースを軽やかに着こなす。昨日まではただの小娘だったかもしれないけど、今日からはお嬢様とお呼びなさい!と言わんばかりの見事なツンデレぶりというか、いや、少しわけがわからんが。春を探し求めては街を徘徊し、ファインダーを覗いては、シャッターを押し─以下その繰り返しを続けているウチに、見えないモノまで見えていたのかも知れない。氷のように蒼冷めた空が日々朧にけぶりゆく、そんな微細な移ろいに気付くなんて、なるほど、カメラにとりついた守護天使様のチカラは偉大だ。レンズ越しに捉えた街の、日々変わりゆく表情に、ちょっと感動の春なのであった。
ニコンD70
シグマ50mmマクロ ニコン50mm