いつの頃からだろう、家庭でおせち料理を作らなくなったのは。黒豆、昆布巻き、煮しめ、きんぴら、なます、栗きんとん・・・。素材から手間暇かけて作るより、買った方が安いし早いし、そもそも家族の誰も、そんなに好んで食べるものでもない。それでも、振り返れば、どんな状況でもおせちを用意しなかった新春はなかったし、今年だって正月におせちだけは食べたかった。そんなニーズに今はネット通販が応えてくれる。写真は割烹料亭千賀のお取り寄せおせち料理「舞千」。味はごくごく普通のおせちのそれだが、どえらくマーベラスに手間暇かけた品々は精緻の極み。実はそれが全部冷凍だなんて、現代テクノロジーの勝ち誇った顔が目に浮かぶ。でもまあ、おせちのない正月を迎えるより、よっぽどマシというもの。ミルキーがママの味であるように、おせちは家族の味なのだ。おせちのない正月は、家族のいない家庭と同じ──ワタシにはそう思えてならないのである。
2010年1月1日 割烹料亭千賀のお取り寄せおせち料理「舞千」 自宅にて
NIKON D90 1/60秒 F3.5 75mm(35mm換算) ISO800