グルメシティ五稜郭店。ホリタと呼ばれた時代から、丸井今井と並ぶ本町交差点のランドマーク的存在だった老舗が、不況という風とともに撤退する。なのに、さほど感慨が湧かないのはなぜだろうか、などとぼんやりと思いつつ本町の交差点に立って、ちょっと驚く。正確に言うと脱力だろうか。
強風で倒れた自転車達の前、くたびれた外壁とは別世界の鮮やかさかつ艶やかさの看板にデカデカと描かれた「売りつくし」という妙にノリのよい筆文字と、その上にある小さな「閉店のため」というゴシック体の文言。対費用効果をきっちり計って作られた工業製品のようなというか工業製品そのものの端正だがどこかエラそうな看板からは、地元に愛されたかつての「ホリタ」と街の物語も歴史も金輪際伝わって来ない。有り体に言えばパチンコ屋の「閉店」のようで、セールが終わったらまた開店しまっせ、みたいな「計算高さ」を感じてしまうのだが──これって考え過ぎなのだろうか?
ファインダーを覗きながら思う。この素っ気ない外壁に大きな絵、たとえばナッチャンRERAのような元気な絵があったなら、随分と街角の印象も変わったのだろうかと。それはたかが気持の問題かも知れない。されどだ。人は気持を持って──夢や希望を持って──生きている。
利益や効率という文字がすかしに入ってそうな看板からは、夢や希望はもちろん暖かみのこれっぽっちもすくい取ることが出来ない。強風で倒れた自転車達の方がよっぽど【人間らしい】と思ってしまうワタシはオカシイ人なのだろうか?まあ確かに否定はしないが・・・肯定もしないけど。
などとボヤキつつシャッターを切る。吹き飛ばされそうな北風の中、それほどワタシが間違っているわけでもあるまいと確信しつつ──あるいは願いつつ・・・。
2009年3月14日 グルメシティー(ダイエー)函館五稜郭店前 MAP
NIKON D300 焦点距離15mm(35mmフィルム換算) 1/320秒 F10