雲の晴れ間から太陽が顔を出し、幾筋かの光が流れ、海面を照らす。
そのうちのひとつが、「なっちゃん」の真っ白な船体を照らし出した。
正直に言えば高速フェリーにあまり関心があったとは言えない。そもそも東日本フェリーが似たような轍を踏むのは今回で三度目で、10月に休止と決まったとき、随分と早い決断に驚いたものの、休止そのものにはさほどの感慨も持ち得なかった。だけど、たまたま立ち寄ったフェリーターミナルで、桟橋に繋留されたままの「なっちゃん」が生きている─正確に言えば補助動力が稼働しているのを見たときはちょいと驚いた。もしかしてカムバック?いや、冷静に考えると─冷静に考えなくても航路復活のセンはかなり薄い。早々の売却に備えて火を落とさずにいると考えるのが自然だろう。それでも心の奥底のどこかでカムバックを望む自分が約一名、間違いなく存在することを知った。
雪が止み、分厚かった雲が散り散りと消えて行った。
冬はまだまだ続くだろうが、いつまでも続くわけではない。
「春」は案外と近いのかも知れない。そうであればいいな、むしろそうあって欲しい。
いつかまた海峡をぶっ飛ばす日が来ることを願いつつ、シャッターを切った。
2008年12月30日 函館市港町 フェリーターミナルに繋留されたままのなっちゃんレラ MAP
NIKON D300 焦点距離25mm(35mmフィルム換算) 1/1250秒 F10 絞り優先AE